管理人こはくです。
経理で振替伝票や仕訳伝票、仕訳帳の「摘要」の記載は、勘定科目等を判断するうえで必要な情報となります。
摘要内容に不備や情報の不足があると、社内監査だけではなく税理士や外部の税務調査への対応に苦慮することになるため、必要な情報の記載が必須となります。
今回は振替仕訳や仕訳伝票及び仕訳帳(以下「仕訳伝票等」という)に記載すべき「摘要」項目を説明します。

出典:ぱくたそ
1.「摘要」とは
「摘要」とは取引等の発生から会計処理までの各帳簿に、発生した内容の要点を記載することで、メモ的な役割を果たしますが、今回は勘定科目の「摘要」を解説します。
入金伝票、出金伝票、現金預金出納帳、仕訳帳、仕訳伝票、総勘定元帳などの帳簿がありますが、一般的にどの帳簿でも「摘要」欄があります。
この摘要欄は発生した内容を記載するための欄で、文字通り「摘要」を記入する欄になります。
ほぼ全ての会社で会計ソフトを導入してるので、ここからは会計ソフト導入前提で説明しますが、仕訳伝票等に仕訳入力を行う際に摘要欄に「摘要」を記載すると、「摘要」もデータベースに組み込まれます。
データベース上で「摘要」は、勘定科目を選定した根拠となり、内部監査や外部監査及び調査への会計対応は、総勘定元帳がメインになり同帳票はベータベースの帳票と言えるでしょう。
ポイント
「摘要」とは主に会計ソフトで仕訳入力を行う際に、摘要欄に発生した内容の要点を記載すること。
2.「摘要」の目的
事務用品を購入したのであれば、取引先から領収証や領収書、レシートが発行され証拠が残るのに、何故「摘要」を記載する必要があるのか。
ここでは「摘要」の目的をみていきます。
(1)なぜ摘要が必要なのか
発生した取引について、費用であれば請求書、領収証及び領収書、レシートなどの証拠書類が必ずあると思います。
発生した取引には証拠書類があるのに摘要は必要なのでしょうか。
仕訳伝票には上記の証拠書類を添付しますが、会計上で処理する「勘定科目」と請求書、領収証及び領収書、レシートなどの証拠書類を紐づける役割が「摘要」になります。
よって勘定科目選定の根拠が摘要となるのです。
摘要は取引を要約し勘定科目の選定根拠が明確となる必要があるということです。
ポイント
勘定科目は摘要で判断 → 摘要は取引を要約 → 証拠書類は取引発生の事実
(2)会社法や内外の監査及び調査への対応
勘定科目選定の根拠が「摘要」になりますが、何に対応するためのものか簡単に説明します。
会社法第431条では「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うもの」と定められており、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行の一つが企業会計原則になります。
企業会計原則の正規の簿記の原則では秩序性が要件にあり、「全ての記録が相互に関連し、組織的・秩序的になされていなければならない」ことになります。
この点について、摘要欄も一定のルールに基づき摘要を記載することになるのです。
また、”1.「摘要」とは „ で触れましたが、内部監査や外部監査及び調査は全ての仕訳伝票を見ることはなく、データベース帳票となる総勘定元帳を見て項目を絞っていきます。
1つ1つの仕訳伝票には請求書、領収証等の証拠書類が添付されていますが、会社の規模が大きくなるほど取引量が増え全ての仕訳伝票に目を通すには膨大な時間と労力がかかり、事実上不可能です。
そのため総勘定元帳をみて必要に応じて仕訳伝票を確認する流れになります。
証拠書類はデータベースにすることはできないためデータベース上、勘定科目選定の判断は摘要しかありません。
よって、摘要は勘定科目の根拠となる内容の記載が必要で重要な項目になります。
総勘定元帳を本棚で例えるなら
本棚はジャンルごとに整理されており、ジャンルの判断は本の内容で決まり、本には題名があり目次がインデックスされ保管されています。
本棚=総勘定元帳
ジャンル=勘定科目
本=取引実績
本の内容=摘要
本は内容によりジャンルが決まり、ジャンルごとの本棚に整理されます。
総勘定元帳も取引の内容=摘要により勘定科目を選定し、勘定科目ごとにデータベース化されます。
3.「摘要」に記載する項目
摘要の重要性は今までの説明で理解頂けたと思います。
では摘要の必要となる項目や記載範囲どのようになっているのでしょうか。
実は企業会計では記録や慣行、担当者や会社の判断による主観性の要素が強い状況になっています。
そのため会社により摘要の観点にも違いがあったりしますが、消費税では「仕入税額控除」の帳簿記載要件として、以下の項目を整然とはっきり記載することを求めています。
(1)法令上必要となる項目
法人として必要となる仕訳伝票の項目は次の4つになります。
ココがポイント
①取引の相手方の氏名又は名称
②取引年月日
③取引内容(摘要)
④取引金額
仕訳伝票で必要な4項目は、仕訳入力において比較的どの会社も記載しているのではないでしょうか。
①、②、④は会計ソフトの仕訳伝票では必須項目というのがほとんどと思いますので特段問題ないと思います。
③については主観的要素が強いため、記載内容について担当者は困った経験があることと思います。
次の項目では③の記載について、説明していきます。
(2)取引内容の明確性
帳簿記載要件の③取引内容について、記載内容を説明します。
取引での帳簿記載要件である①誰と②いつ④どれくらい取引したかは明確にすることができる状況でしょう。
③何をどうしたかについてはケースバイケースにより社内のルール化が難しい側面があります。
また、摘要欄には文字制限がありますので、簡潔で明確な記載が求められます。
所得税法の観点からも、例えば、法定外福利の福利厚生費は対象となる条件や金額の要件が満たない場合は福利厚生費として認められないこともあります。
この場合、交際費となることがほとんどですが、交際費も金額により損金不算入となります。
このように、支出内容が同じでも要件等により勘定科目が違う場合があります。
そのため、③何をどうしたかは、勘定科目と紐づく摘要にすることで取引内容の明確性に対応することになるのです。
では具体的な例をみてみましょう。
例)〇月✖日、得意先のA社2名と当社2名の4人で、業務打ち合わせ後にB店で飲食し金額の2万円を当社が支払った場合。
①取引の相手方の氏名 = B店
②取引年月日 = 〇月✖日
④取引金額 = 20,000 円
②、④は特段問題ないでしょう。
①については、飲食店のため取引先マスタに登録していない場合もあり、その場合は③の摘要に記載することになります。
では本題の③の摘要について下記の摘要ではどれが勘定科目と紐づくでしょうか。
1.業務打ち合わせによる飲食代4名分
2.飲食代 B社2名当社2名
3・A社との飲食代4名分(業務打ち合わせ)
1と2と3で「飲食費」の科目に紐づいてる摘要は2のみです。
飲食費の要件を簡単に説明すると、飲食した店名(名称)と所在地、1人あたり5千円以下で飲食に参加した氏名、会社名が要件となります。
稟議書で要件を満たしたり領収書に記載することで要件を満たせますが、仕訳伝票の摘要で要件を認識している人が処理したと分かるのが2となります。
社内監査や外部調査等でデータベースによる判断でも2が一番理解しているということになります。
ココがポイント
・勘定科目とリンクする取引内容(摘要)にする
・取引内容(摘要)の記載順も勘定科目を優先とした記載にする
・情報の記載は簡素化しても要点はおさえる
まとめ
仕訳入力の摘要の重要性を説明しましたが、いかがでしたでしょうか。
通常業務では摘要が注視されることは少ないと思いますが、社内監査や税務調査等では摘要から様々な部分を見ることになります。
日々心がけて処理するようにしましょう。